紡がせてこそ華となる

 ――単に、少しばかり興味が湧いただけだった。

 夢乃舎と香月の行為においては、夢乃舎が香月の身体を好き勝手暴いていることが多い。そもそもの始まりがそうであったというのもあるだろうが、香月が夢乃舎のそれらの行動をそのまま受け入れているから、というのは多大に影響しているだろう。
 故に、夢乃舎は思ったのだ。
(香月は、どこまで焦らしたら、ぼくに強請ってくるんだろう?)
 と。

 そう考えた夢乃舎は、とある日に香月をベッドにいつも通り組み敷いた後――今回は、香月の家での行為だ――いつも以上に丁寧に香月の身体に触れていたのだった。
 頬を撫ぜ、首筋を撫ぜ、喉元を甘噛みし。手のひら全体で腹部や太腿を撫ぜ回しては、服に隠れて見えない位置に痕を残す。夢乃舎が啄むようにして香月の身体のあちこちに口付ければ、香月は上擦ったように鳴いてみせた。
 そうして寛げた香月の下着越しに性器を刺激した後、それこそ普段の倍の時間ほどを使うつもりで刺激を与え。何なら一度達した香月の性器を、夢乃舎がさらに扱いてやるまでした上で。
「ひ、ゃ…ッ、ぁ! ふ、ぅ…んん……っ」
 ぐちり、とローションを多量に注ぎ込んで解した香月のナカを夢乃舎がかき回せば、か細い悲鳴のような喘ぎ声で以て、香月がシーツの上で悶えている。
 その姿を見ながら、ふ、と夢乃舎は息を吐いた。自身が吐いた息に、熱が籠もっていることには自覚がある。普段であれば、既に中に挿入しているくらいの時間、夢乃舎は香月に触れているし、快楽を与え続けている筈だ。
 それにも関わらず、香月は甘く鳴くだけで夢乃舎に続きを――具体的に言えば挿入を強請ってくる気配はなかった。指でナカまで解している状況で、香月が夢乃舎に強請りもしないというのは、ただただ我慢強いと思うべきか、それとも。
 どことなく面白くなさがちらついた夢乃舎が、薄く汗ばんだ香月の腹に軽く爪を立てると、それだけで香月は軽く達したらしかった。
「~~ッ」
(……ここまで気持ちよくなってるのに、続きが欲しいとか言わないわけだ? まぁ、他の台詞も大体ぼくが教え込んだし……)

 そこまで考えを巡らせたところで、ふと夢乃舎は気が付いて、思わず喉の奥で笑い声を漏らした。
「……あぁ、そっか。お前そういう”オネダリ”したことないし、聞いたこともないのか」
「、?」
 ぐちゃぐちゃに快楽で蕩けた香月の瞳に、僅かに疑問が乗ったのを見ながら、夢乃舎は自身も随分と熱が乗ったと自覚した声で、耳元で囁いた。
「かぁづき、ぼくの、欲しい?」
「…ゆ、めさ、の……?」
「そ。欲しいなら、言って」
「…えと、……」
「ぼくに、『挿れて』って」
 夢乃舎の言葉に応じるように、少しの沈黙の後。はく、と香月の口が僅かに動く。
「夢、さ……」
「ん?」
「い…挿れて、…ボクの、ナカ、挿れて…っ」
 とろとろと甘ったるく蕩けた声が、夢乃舎へと懇願してくる。しかも、夢乃舎が言った通りの言葉を口にして。その事実に満足した夢乃舎は、殊更に甘やかにその懇願に応えてやることにした。
「はは、香月上出来。よく言えました。……ちゃぁんと、挿れてからもぐちゃぐちゃに気持ち良くしてあげる」

明燈は香月くんに優しいため……(抱き潰さないとは言っていない)