興味本位の至る場所

 特段告げたことはないが、間は大貫の顔立ちが好きだ。特に横顔を見るのは。それもあって、今のデスクの配置というのは、間にとって非情に都合が良いといって差支えがなかった。

(……あ、キスしたい)
 そんな折、唐突にそう考え、椅子から立ち上がると間は大貫の名を呼ばう。
「大貫くーん」
「なんだ間、君……」
 間の呼び掛けに応えるように、間の方を向いた大貫に向かって唇を軽く重ね合わせる。大貫の瞳が僅かに見開かれたのを確認した間は、その事実に満足するとそのままひらりと立ち去ろうとし。
「……ちょっと待った」
「おっと」
ガシリと大貫から腕を掴まれた。



 腕を掴まれた間は、心底不思議そうな瞳で大貫を見つめてきた。
「なーに、大貫くん急に」
「それはこっちの台詞だ。何だ今の」
「何って……キス?」
「いやそれは私だって分かる。分からないのは、どうして急に君がそんなことをしてきたのかだ」
 そう告げれば、間は変わらずやや不思議そうな色合いを浮かべた表情のまま、こう告げる。
「したいと思ったからしただけだけど」
「それだけか?」
「それだけ」
「…………へぇ」
(君ときたら、随分と警戒心のかけらもない行動をする……)
 大貫がそう考えている目の前で、間は掴まれた手を揺らしこそすれ、逃げる様子は見せない。
「つまりだ。私が、君に、したいと、思ったのであれば、してもいいわけだ?」
「……えっ」
「君の理屈なら、そういうことだろう?」
 大貫の問い掛けに、間が困惑した様子を浮かべる。
「それはちょっと……ダメじゃない……?」
 その上で、そんな風に言ってくるのだから。大貫はやはり、その手を離すわけにはいかないのだ、と理解する。ふらふらと離れていく相手は、当然、繋ぎ留められなければならない。大貫の手元に。
 やや間が及び腰になった気配を感じたものの、大貫は構うことなく先ほどの間と同じように唇を重ね合わせた。対して間は完全に目を瞑っている。すぐに終わるだろう、と、そう思っているのだろう。
 けれど。
(それだけで、終わるわけがないだろう?)
 ぞろりと大貫の腹を這いずったものを、間にも理解してもらう必要がある。

 いつまでたっても離れる気配のない大貫に、先に息が続かなくなったらしい間が緩く口を開けた隙を逃すことなく、大貫は舌を間の口の中へと捻じ込んだ。
「んぅ!? …ふ、っ、…んン、」
 流石に間の瞳が見開かれ、大貫から距離を取ろうとする。だが、大貫はそれを逃がすことなく、間の頭を腕を掴んだのとは反対の手で抑え、舌で口内を?き回していく。
「ぅ、んん……っ、ふぁ、ま…っ」
 くちゅくちゅと舌を絡め、口内を蹂躙していく内に、間の抵抗は弱まり、小さく身体が跳ねる。
「~~っ、ぁ、っ、…ふ、」
 最後にじゅ、と軽く吸い上げてから、大貫は間を解放してやる。すると、力が抜けたのかへたりと間は大貫に凭れ掛かってきた。口内を犯してきた相手に身体を預けざるを得ないのは、間の自業自得だ。大貫はそう考えながら、間の顔を覗き込んでやる。
「……っ、」
 生理的な涙で揺れる瞳も、唾液でてらてらと反射する唇も、ひどく、綺麗だ。
「これでお相子だ」
 そうだろう?と問いかけた大貫に、間は何か言いたげな表情を一瞬見せたものの、最終的には降参したように「……それでいいよ……」と大貫に再度凭れ掛かるのだった。

まぁまぁ書き上がって放置したのを発見したので完成させた。間くんはキス逃げが似合うと思うし、大貫くんはキスだけで間くんを腰砕けにしてくれないかなと思っています。