レイ・ベア・ユー

「…ん、ふッ、…ぁ…!」
「……」
 室内にくちゅくちゅと水音が響いている。いつものようにKneelでラグの上に腰を下ろした間の口の中を、大貫が指であちこち触れているのだった。大貫は戯れに上顎を軽く引っ掻いたり、頬の内側のあたりを撫ぜたりしながら時折刺激を与えてくる。大貫が「先に歯磨きでもしてもらおうか」と言い出した際には、間も何事かと思ったわけだが、これが始まった瞬間に意図は理解できたのだった。
 時計に背を向けてKneelしている間には、既にどれほど時間が経ったのか不明だが、それなりの時間こうされていることだけは明らかだ。すると、間の意識が緩く逸れたのを察したのか、大貫が叱るように間の舌を軽く引っ掻いた。
「~~ッ! ぅ、…」
 その刺激に間の身体が僅かに跳ねる。ぱた、と飲み込み切れなかった唾液がラグへと滴り落ちた。間はどうにか下に唾液を垂らさないように嚥下したいのだが、大貫の指があるのも手伝って上手く嚥下できていないままだ。
「ん、ン…っ、……ふ、…」
(大貫くん、何がしたいの……?)
 間としては意図が読めないものの、自身のパートナーの大貫からの命令であるし、セーフワードを出して拒絶するまでのことでもなかったものだから、大貫の行動を受け入れてはいるのだが。その大貫はあくまでも、指で間の口内を弄りまわしているだけだ。口の中以外にはどこも触れられておらず、大貫はじぃと間を見てはいるものの、時折「ふぅん」と声を漏らすのみ。それなのに。
(頭、ぐらぐらする……ッ)
 頭の芯が痺れるような快感が、間に募っている。下半身にじわじわと集まる熱と相まって、間は本来のKneelの体勢を崩し両手を床へとついて己の上体を支えているような状態だった。大貫がそれを咎めないのは、そもそもそれも織り込み済みだからだろうか。


 ようやく満足したらしい大貫が、間の口内から指を抜き去ったことで、間はラグへと己の上半身をべしゃりと横たえた。長々と口内を弄られていたせいか、どことなく違和感が抜けない。
「……はッ、ぁ……、ふ」
 さらには、ぐらぐらと身体の中で燻る熱が、間にこの先の行為を求めてくる。とはいえ、大貫の意図が読めていない以上、間としてはどう動いたものか頭が上手く働いていないのだが。
「……なぁ間」
 暫し間が呼吸を落ち着けていると、頭上から大貫の声が降ってくる。間が視線をどうにか上げた先。ゆるりと瞳に熱を燻らせた大貫が、間を見下ろしながら問うてくる。
「この後、どうしたい?」
(……あぁ、大貫くんも、興奮してるんだ……)
 そのことに、間の中でコトリと満足が積み上がる。間は緩く己の口の端が上がっていくのを自覚しながら、手を伸ばしてこう告げた。
「……ん、大貫くん。抱いて」
 ひそ、と願った間の言葉に応えるように、間の手は確かに取られた。

口内を指でがちゃがちゃ弄るのが好きだし、口に指が入っているので上手く唾液が嚥下出来ないのも非常に良い。