内部侵蝕

 大貫が自身の銃を手に持っているのを見た間は、最後の確認とでも言うかのように問いかけを口にした。
「大貫くん、ほんとにするの……?」
「するよ? 君だって一度は同意したじゃないか」
 大貫が告げれば、うろり、と間の視線が彷徨う。
「そうだけどさぁ……。いや、流石にこれが原因で大貫くんが始末書とかになったら、僕が気まずいし」
 間の懸念は最もだとも言えた。今ここにあるのは、大貫の銃なのだ。本来の用途と違う使い方をしたために、本番で何かありました、では困ると思っているのだろう。
(……それ、自分の銃だったら万が一不発で失敗してもいいと思っている、ということなのか?)
 大貫はどことなく面白くない気持ちになりながら、銃を持つのと逆の手で床を指さし端的に命令をする。
「間、座れ」
「! ……はぁい」
 ピシャリとした物言いに間は僅かに肩を跳ねさせたものの、すぐさま従順に床へと跪く。スーツに汚れが付くのを気にしないようなその間の反応に、大貫は少しだけ溜飲が下がった。まぁ、勿論使用頻度が低い休憩室とはいえ、掃除は定期的に行われているのだが、それはそれ。従順な態度というのは、単に大貫の気持ちがいいだけの話だった。そのまま、跪いた間と向かい合える位置に椅子を移動させた大貫は、そこへと腰かける。椅子に座る大貫と、床に跪いている間では、当然大貫の方が視線が高い。
 大貫が見下ろした間の瞳には、確かにとろりとした歓喜が混ぜ込まれつつあった。故に、大貫は先ほどとは打って変わって、甘やかさすら滲む柔らかい声音で先を促す。
「間、口を開いて」
「ん、……」
 おずおずと口を開いた間は、「どれぐらい開くべきなのか」をやや迷ったような表情のまま、大貫を見上げてきた。その表情に、端的に言えば劣情を催した大貫は、間の口へと銃口を捻じ込んだ。捻じ込む際に、銃のどこかしらが間の歯に当たったような感覚が伝わってきたが、間が痛がった様子を見せなかったため、大貫は何も言及しない。
「んぐ、……っ、」
「ほら、舐めて。……いつも、しているみたいにさ」
 大貫の台詞に、間の肩が僅かながら跳ねる。相変わらず、間はそこを突かれると痛いらしい。それならば、止めればいいだろうに。何故だか、間はその部分に関しては大貫の思い通りにならない。……こうして、大貫から銃を口へと捻じ込まれることすらも許容する癖に。
(あぁ、やっぱり気に入らないな……。どうしたものか)
 大貫は腹の奥底で溜まるものに僅かに眉をしかめつつ、銃を更に口の奥へと押し込む。
「んッ、…ふ、……ぁ、」
 ぴちゃぴちゃと大貫の銃に舌を這わせている間は、当初渋っていた割には随分と乗り気になっているらしかった。間の目尻にじわじわと上る熱と、緩く上がりつつある吐息が、それを示している。だが、その分他の所に気を配る余裕がないのか、いつの間にやら間は大貫に縋るように、大貫の腿の上へと己の手を置いていた。もう片方の手で銃を持つ大貫の手を掴まないのは、流石に危険だと判断しているからだろう。
「……体勢を変えようか?」
「んん、……ふ、ぁ」
「ふぅん」
 大貫からの問い掛けに、間は緩く否定を返す。代わりに、快感を逃がしたかったのか、間の手が軽く大貫の腿を引っ掻くように爪を立てる。そのことに大貫は喜悦を覚えながら、そっと指を動かした。――銃の引き金へと。
 大貫とて、間にこんなことをさせてはいても、撃つつもりなど毛頭ない。だからこそ安全装置はかけたままであるし、引き金に指もかけていなかった。だが。
(もし、私がお前を"そう"しようとしたら、どんな反応を示すんだ?)
「ンっ……!」
 間にもその動きは当然見えているわけで。大貫が銃の引き金に軽く指を掛けた瞬間、間はびくりと肩を跳ねさせ身体を強張らせた。これは非常に単純な反射的な反応だ。「銃の引き金を引こうとする仕草」そのものに、すぐさま反応できるようにしているのだから。たとえ、ここで引き金に手を掛けるのが大貫以外でも、間は間違いなく反応を返していただろう。けれど。
「……間、お前今どんな表情しているか、自覚があるか?」
「…っ、ひら、な……」
 今、間の前にいるのは大貫であるので。間の表情も瞳も、大層正直に。大貫の行動に興奮を覚えたことを示していた。間の目にうっすらと生理的な涙の膜が張り、ゆらゆらと揺れる中。興奮で蕩けているのが、如実に分かる。
「"気持ちいい"、って顔だぞ」
「は、ふッ……ん、」

 とはいえ。間の瞳に映る大貫の表情も、さして間のそれと差異はないのだろうけれど。大貫は大層心地いい気持ちになりながら、間の口から銃をずるりと引きずり出した。  

銃フェラが好き、という強い感情で書きました。ちょっと嗜虐心が出てる大貫くんと、大貫くんに命を握られていると思うとちょっと興奮しちゃう間くん。