消印 十月十七日

尾北 信以様

拝啓 爽やかな秋空が続く毎日ですが、いかがお過ごしでしょうか。

とはいっても、存外貴方は代わり映えがしない毎日だ、と思っているのかもしれませんが。想像で書くのもどうかと思いますので、こちらの近況報告でも告げようかと思います。
もしかすると、大貫から、いえ看護師の方を通じて聞いているかもしれませんが、花音さんの葬儀はきちんと完了しています。大貫と僕とで手配をしました。彼女の友人たちも見送っておくれたので、そこだけは安心してください。それ以降の月命日についても、法事については全て大貫が代行をしています。納骨堂の場所については、貴方が退院した際にでもお伝えしましょう。その方が、きちんと出てくる気にもなりそうですし。

大貫については、まぁ、彼もいい年をした大人なので、普通に仕事はしています。仕事を詰め込むことでどうにかしたがっている節はありますが、僕が適度に手綱は取っておくのでご心配なく。
心配なのは刈野の方です。一応断っておくと、刈野自身は特に大きな処分は食らっていません。本来全員が押収されていた筈の銃を所持していたことは捜査一課からも色々言われましたが、貴方の指示だということで此方が押し通しました。刈野は不満そうでしたがね。まぁ、貴方だってそれくらいは被ってくれるでしょう? あれだけ庇い立てしてくれた刈野相手なんですし。刈野の話に戻ります。あいつは少し地に足が付かなくなったように、思わなくもないです。僕も見ておくつもりですが、何かあったら……まぁ、悲しむくらいはしてやってください。と、僕が勝手にこう書いていたことは内密に。いや、そもそも言う機会ないかもしれませんが。案外、貴方に会うために途方もない行動力を見せるかもしれないので、念の為。


んー、近況報告、僕もしておくか。通常通りです。


貴方が死ななかったことは、嬉しいですよ。貴方は死なせてくれと思ったでしょうが。個人的には生きて償えとかは言いません。だって、死ぬつもりでいたのに生かされている今の状態の方が、よほど罰でしょう?
僕からも貴方には「自死せずに生きろ」と呪いを掛けさせてもらう。僕が言ったところで効果があるかは分かりませんが、大貫も刈野もあまりそうは言わなさそうだから。

もっと早く、貴方の違和感を追求すべきだった。悠長に様子見などすべきではなかった。貴方が、花音さんを殺す前に行動を起こしておくんだった。いっそ、それで僕に何か起きてしまっても。僕にある後悔はそれだけです。貴方のためにも、とまでは言うつもりはないですが。その方がよほど大貫くんにも貴方にも、良い結果をもたらせていた気がするのに。

貴方への手紙で、僕の後悔を書いたところであまり意味はないですね。ただまぁ、今更便箋を変えるのも面倒なのでそのまま送ります。馬鹿だなぁとでも思って読んでください。

それでは、身体にはお気をつけてお過ごしください。

敬具

間 光











尾北さん。僕は本当に、貴方のことを尊敬していたし、誇りに思っていたんですよ。

ED後の間くんはちょくちょく手紙を出していたかもしれない、と思います。読まれなかったとしても、あることに意味があるだろうという思惑の下。