間の写真から大貫が居場所を推理し、迎えに行くというのは刈野にとっても数ヶ月おきに発生するイベントと化していた。そしてその際、刈野は大抵、大貫にお土産を要求するようにしている。心配はないとは思うが、一応のちょっとした楔というか願掛けというかのつもりであった。今回長崎に向かった大貫に刈野が頼んだのは、皿うどんと角煮まんじゅう。まぁ、大貫は大抵戻ってくる時にそれ以外も一緒に買って帰ってきたりするのだが。
そんな刈野が任されていた仕事を片付けていたところで、スマートフォンのトークアプリが通知を出した。珍しいな、と思いつつ刈野が覗き込んだトーク画面には、『面倒になったからクール便で送る。間にも折半させたから、金額は気にしなくていい』という文面。それを見て、刈野は自身の先輩たる二人がそれなりに落ち着くべきところに落ち着いたことを確信し、安堵の息を吐いた。
(今までは……大体は大貫さんが苦労して推理して向かって、ニアミスだったもんな……)
刈野は、今までの流れを思い出し些か遠い目になる。刈野のところに気まぐれに送られてくる、間からの写真とメッセージから間の居場所を推理するという、難易度がたいそう高いゲームだ。おかげで、大貫も刈野も相当推理能力が上がった。それが職務でも役立ったことがある辺りが、刈野に複雑な気持ちを増長させてくる。
「いや、まぁ、それもこれで報われたんだしいいか……」
椅子の背に凭れかかった刈野は、僅かに思案する。間がこちらに戻ってきたら、今までの大貫の色んなことをバラして、ついでに如何に自分の胃が痛かったかを訴えよう。そう決めた刈野は、気持ちを一つ切り替え、再びパソコンへと向かい合った。
刈野くんも一安心。