光に狭間は通用しない

○間からの初回連絡をゲロる刈野くん

 昼休憩に入った刈野は、己のスマートフォンのトークアプリに通知が入っていることに気が付き、首を傾げた。トークアプリでの連絡は、限られた相手としか交わしていない。そのため、刈野は年齢の割にトークアプリの利用頻度が低い方に属していた。そうして何の気なしに開いたトーク画面のトーク相手を見て。
「!? ゲホッ!」
 思い切り水にむせる羽目になったのだった。

「……大貫さん、すみません、ちょっと」
「なんで仕事中でもないのに、心底嫌そうな声で話しかけてくるんだ」
「いや割と気が重くて……。でも今じゃないと後が怖いし……」
 妙な態度の刈野に首を傾げつつ、休憩室に入った大貫は刈野の私物のスマートフォンを差し出され、さらに首を捻った。
「別に私に見せる必要は……」
「あの、発信相手見てください」
「…………」
 そう言われ、よくよくトーク画面を確認した大貫は。刈野の目の前で、盛大に眉間に指を当てる羽目になった。
『わんこそば美味しかった』
「日記か???」
「なんで僕、みたいなところもあるんですけど」
 端的に言ってしまえば、間からの写真付きメッセージが、ぽんと送られてきている。しかも刈野に、である。大貫としては、間のトークアプリの話し相手の数を思い返し、刈野なのは消去法なのだろうなという予想は付いたが、それはそれとしても頭が痛い。間の自宅を確認してきた後のブチギレぶりも見ている刈野は、下手に隠し立てせず早々に大貫に見せることを決めたらしかった。
「……まぁ、分かったことはすぐ話せと散々、散々言ったからな。それは褒めよう」
「褒めてる時の声色じゃないですけど」
「やかましい、キレるぞ」
「理不尽!」
 悲鳴を上げた刈野は、もう一度間から送られてきた写真をよく見た後、「あっ」と声を上げた。
「どうした?」
「ここ……箸の入ってた紙袋の文字、店名じゃないですか?」
「何? ……確かに、微妙に見えづらいが……」
 わんこそばの成果を見せるように撮られた写真の下部、見切れるようにして間がいたであろう店の名前が印刷された箸袋が写り込んでいることに二人は気が付く。
「……休憩中に探すか」
「それ、僕も頭数に入ってます?」
「当然」
「酷い!」

 なお、これ以降大貫と刈野は、ひたすらに間が気紛れに送ってくる写真と情報から、彼の居場所と滞在時間を推理することになるのだが、その時はそのようなこと、どちらも想像していないのだった。

大貫くんも刈野くんも大変。